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アートディレクター長谷川祐子さんに訊く。 『森の芸術祭 
晴れの国・岡山』
にかける思い

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」アートディレクター・長谷川祐子さん

2024年9月、岡山県北部エリアを会場に『森の芸術祭 晴れの国・岡山』が開催されます。
アートディレクターを務められるのは、金沢21世紀美術館の館長であり、
数々の国際的ビエンナーレも手がけられている長谷川祐子さんです。
長谷川さんが本芸術祭にかける思いは、
まさに「人、まち、社会」をつなげる強い志でもありました。

「森」がもつイメージで牽引し、
岡山のこれからに光を当てられるように

「本芸術祭では、もともと『山の芸術祭』という名前をご提案いただいていました。ですが、岡山県がめざす方向性をお聞きしたときに、『森の芸術祭 晴れの国・岡山』がいいのではないかと提案しました。『森』はさまざまなものが混ざり合う場所であり、私たちの知らない何かが隠れているようなイメージがあります。そこに、岡山県特有の明るい雰囲気を伝える『晴れの国』という言葉を組み合わせた方がより魅力的であると考えました。人々や自然のものたちがそれぞれ違う場所に集まっているけれども、『森』という大きな一つの世界観の中に入ることができるなど、さまざまな比喩としても使える『森』は現代のエコロジーやサステナビリティというコンセプトも牽引していけるイメージに溢れた言葉でもある。そういったイメージをもつ芸術祭で、岡山県北の未来に光を当てたいという思いがありました」

自分が住む場所の
先代的な力や良さを自覚できるように

「イメージで牽引していく」という考えは、まさに長谷川さんならではであり、聞く人の想像を掻き立てるものでした。長谷川さんはさらに続けます。

「もう一つの思いとしては、住民の方々に岡山県北エリアの潜在的な力や良さを自覚していただきたいということがあります。岡山の県北は自然の恵み、つまり木々や食の素材、水、大地が非常に充実しています。そして、『晴れの国』としての太陽がある。そういった自然本来の豊かさを再確認していただきながら、山陰山陽をつなぐものとしての歴史であったり、現在を未来につないでいくさまざまな産業の可能性であったり、そういうことへの想像力を広げていただきたい。森の芸術祭がそのエネルギーとなればいいなと思っています」

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」アートディレクター・長谷川祐子さん プロフィール

長谷川祐子 金沢21世紀美術館 館長 / 東京藝術大学 名誉教授
キュレーター/美術批評。京都大学法学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。水戸芸術館、ホイットニー美術館客員キュレーター、世田谷美術館、金沢21世紀美術館、東京都現代美術館を経て、2021年4月から現職(金沢21世紀美術館)。文化庁長官表彰(2020)。

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」アートディレクター・長谷川祐子さん プロフィール

長谷川祐子氏が手がけられた展示図録や関連書籍 イスタンブール(2001)、上海(2002)、サン・パウロ(2010)、シャルジャ(UAE) (2013)、モスクワ(2017)、コラート(タイ) (2021) などでビエンナーレを企画。日本の現代美術、ジェンダーやエコロジーに関する著作として『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』、『破壊しに、と彼女たちは言う:柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』、『ジャパノラマ-1970年以降の日本の現代アート』、『新しいエコロジーとアート-「まごつき期」としての人新世』など。

岡山県北エリア「神庭の滝」

芸術を通じて、地域に活力がみなぎっていく。
22年秋の「森の芸術祭 晴れの国・岡山」開催発表から、現地視察、そして参加アーティストが実際に地域に滞在し作品を創り出す「アーティスト・イン・レジデンス」プロジェクトが行われました。23年には地域の方々と交流を深めるシンポジウムも開催。地域の方とアーティストの皆さんとの交流が増えていくにつれ、岡山県北にはそのムードが現れつつあります。実際に地域の方とつながってみて、長谷川さん自身の意志もより強いものになっていきました。

「シンポジウムや交流会に集まってくださった地域の方たちは、いろんな意味で率直な期待を示してくださいました。その方たちの期待に応えたい、一緒に盛り上げていただきたいということを強く思います。森山未來さんらはじめ、津山で皆さんに対してパフェの試食というとびいりパフォーマンスを含めてプレゼンテーションする機会をいただきました。ジャコモ・ザガネッリやリクリット・ティラヴァニなどアーティストの皆さんもプロジェクトを通して地域の方と関わってくださっており、彼らの声を聞くと非常にポジティブな感覚になります」

きっかけは「映え」でもいい。
その先に「芸術祭へ入り込める計算」がある

さまざまな期待が高まる中で、「森の芸術祭」がどういったものになるのかますます気になってきます。その魅力とはどういったものになるのでしょうか。

「街の情景や、自然のランドスケープとして、見慣れている空間の中に、日ごろはないようなものが置いてある。そういった未知との遭遇は、その場所の空気を活性化してくれますよね。それはつまり、『自分が慣れ親しんいでるものや空間が変わっていくことの楽しさ』なのだと思います。そこには純粋な驚きや美しさに対する感動、そして、学びといろいろな感情があると思うのですけれども、そういったいつもとは違う体験を慣れ親しんだ空間でできるということが『森の芸術祭』の一つの魅力ではないかと思います」

森の芸術祭会場「奈義町現代美術館」
岡山県北エリア「上籾棚田」

より多くの方に来て楽しんでもらえることは、「人、まち、社会」の未来にもつながっていく。「SNSでの伝え方」においても長谷川さんならではの想いがありました。

「適切なインフルエンサーの方たちに来ていただき、アート体験とその発信をしてもらうってことは非常に重要であると考えています。その人の声だから響くということがあり、私が言うそれとは響き方が違うはずですよね。そういった観点をもった戦略を使うべきだと思っています。そもそも皆さんに関心を持ってもらえないと、当然その空間に来てもらえませんので。

同時に、普通に見ていわゆる『映える』という道があります。その『映える』場面をどれほどつくれるかということも、心得ています。皆さんがSNSにあげるムービーや写真なども意識して、それぞれの場所に魅力的なものをちりばめていく。ある意味で表層的なのですが、そこからさらに1段階、2段階と深掘りしていってもらう。最初の分かりやすい“つかみ”でまず惹きつけ、それからアートの本質的なところに自然と入っていただけるように考えています」

「レガシー」をつないでいくことが、
その場所の次につながる

長谷川さんの言葉を聞けば、誰もが自然と楽しめる芸術祭となることへの期待が膨らみます。さまざまな形で展開されるアートは、その土地の新たなエネルギーを生み出し、その場に形を残し未来に引き継がれていくのでしょう。錚々たるアーティストたちがどういった作品を残すか楽しみですね。最後に「森の芸術祭」がつなぐ未来について、長谷川さんに伺いました。

「今回は、全く新しい場所で新しいことをやるということでもあります。いわば、キックオフのようなものですよね。開催期間のみならず、パーマネントな作品を残すということもいくつか意図しています。そういった新たな『レガシー』をもって次の芸術祭につなげられれば、継続的に観光客の方が魅力を発見できる記号、文化資本、すなわち、その土地のブランディングになっていくはずなのです。世界各地でビエンナーレをつくってきましたが、こういった取り組みは地元のアーティストやデザイナーや職人を含むクリエイターに対しても刺激を与えることができます。視座高く見ると、それはマーケットの活性化につながるということでもあり、地域にとって非常に大きいことであると思います」

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」ロゴ

イベント情報

名称
森の芸術祭 晴れの国・岡山
会期
2024年9月28日(土)~同 11月24日(日)
エリア
岡山県内の12市町村(津山市、高梁市、新見市、真庭市、美作市、新庄村、鏡野町、勝央町、奈義町、西粟倉村、久米南町、美咲町)
アート作品設置市町村
津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町
アートディレクター
長谷川祐子
主催
「森の芸術祭 晴れの国・岡山」実行委員会
会長 伊原木 隆太(岡山県知事)
構成団体
岡山県、津山市、高梁市、新見市、真庭市、美作市、新庄村、鏡野町、勝央町、奈義町、西粟倉村、久米南町、美咲町、西日本旅客鉄道(株)、(公社)岡山県観光連盟、美作国観光連盟、(公社)岡山県文化連盟、岡山県教育委員会、大学コンソーシアム岡山、岡山県市長会、岡山県町村会、岡山県経済団体連絡協議会、(一社)岡山県商工会議所連合会、岡山県経営者協会、(一社)岡山経済同友会、岡山県中小企業団体中央会、岡山県商工会連合会、(公社)岡山県バス協会、(一社)岡山県タクシー協会、(一社)岡山県レンタカー協会、全日本空輸(株)岡山支店、日本航空(株)岡山支店、(一社)日本旅行業協会中四国支部岡山地区委員会、(一社)全国旅行業協会岡山県支部、岡山県旅館ホテル生活衛生同業組合

企画協力:西日本旅客鉄道株式会社
事務局:岡山県産業労働部観光課

「森の芸術祭」につづく
「活気の源」を探して

芸術をはじめ創作や表現を通じて、地域に未来への期待と活気があふれる。
西日本では、その「源」となる取り組みが広がっています。

をクリックで詳細を表示します

地図
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岡山県北エリア「神庭の滝」

西日本の新たな象徴的アートイベントへ
「森の芸術祭 晴れの国・岡山」in 岡山

岡山県らが主催の壮大なアートプロジェクト。世界各国からさまざまなアーティストが岡山県北エリアに集う『森の芸術祭 晴れの国・岡山』が開催されます。雄大な自然と歴史ある会場がおりなす幻想的な芸術作品は、その地に新たなエネルギーとレガシーを創り出します。
芸術を通じて西日本がさらに盛り上がっていく姿を岡山で。未来につづく芸術の新たな物語がはじまろうとしています。

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「大阪・関西万博」会場イメージ

西日本から世界へ未来社会を魅せる
「大阪・関西万博」in 大阪

2025年、「大阪・関西万博」が開催されます。大阪市此花区に現れる「夢洲(ゆめしま)」で、世界とともにつくる“未来社会のショーケース”を目指す国家主導プロジェクト。未来のモビリティ、先端技術をリアルとバーチャルが融合した会場で体験できます。
西日本における「世界との共創」の実現は、「人、まち、社会」の絆をさらに強め、未来に進む力を生み出す「新たなエネルギー」に変換されていくでしょう。

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金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 外観
撮影:渡邉修
提供:金沢21世紀美術館

北陸新幹線の延伸でさらにつながる
「金沢21世紀美術館」in 石川

北陸新幹線の金沢~敦賀間開業で、西日本と北陸がもっとつながる。
金沢21世紀美術館の館長を務めるのは「森の芸術祭 晴れの国・岡山」アートディレクターでもある長谷川祐子さんです。
「開かれた美術館」という言葉をもとに、さまざまな思いと計画があふれる金沢21世紀美術館は、未来へのヒントとなる新たな芸術体験へより多くの方を誘います。

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「アーティスト・イン・レジデンス」尾道の風景

五感で得られる創作インスピレーション
「アーティスト・イン・レジデンス」in 尾道

芸術を通じて地域が活気づく。「アーティスト・イン・レジデンス」は地域外からアーティストを招き、滞在中の創作活動をサポートする取り組みです。
数々の有名作品の舞台ともなっている広島県尾道市もその取り組みに力を入れています。自然や歴史的建造物の景観、瀬戸内の静寂な海とまちの音、食や工芸をはじめとする文化など様々なインスピレーションにあふれています。

いい明日ってなんだろう?

『森の芸術祭 晴れの国・岡山』が描く未来は、
「人、まち、社会」のつながりが進化する未来でもありました。
そういったクリエイティブな取り組みに対してJR西日本ができることは何でしょう。
長谷川さんは率直に期待を示してくださいました。

「芸術祭では、体験のみならず、『時間の質』も非常に重要です。『これは面白そう』と思ったときに、それが何キロ先にあり、そこに行くための交通手段は何かとすぐ出てほしいと誰でも思われるのではないでしょうか。芸術祭の時間をどのように質よく使えるか、ということにつなげるためには、移動シミュレーションとコンシェルジュサービスをもったアプリができることを非常に期待しています」

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